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モスクワで老婆に叩かれ壊れたカメラ

10月半ばのモスクワの午後、12~13℃の陽気とロシア人の友人が一緒だったのもあり、
ちょっと気を抜いて歩いていました。目に入ってくる雑踏もなんとなくのんびり見えて、
すべてが暖かくやさしく感じられていた。これは疲れのせいか?そんなことも疑いもせずに。
そんな中、キノコが目に入ったのです。大都会モスクワの真ん中でプラトークを被った老婆は
何も言わずじっと座って大きな大きなキノコをかごいっぱいに入れて座っていました。
緩やかに時間が経って行くようでとてもいい風景だった。

そこを何歩か過ぎ去って下世話な思いが沸き立ってしまった、「写真撮っとこ」。。。
「ねえ、写真撮りたいから、あのおばあさんに断ろうか。」
「いいよ、行こう。」
振り返るとキノコの前には一瞬にして大勢の人だかり。
おそらくヨーロッパから来た観光客らしき人たちがキノコの写真を撮っている!
ここで判断を誤ってしまったのです。
「あ、いいんじゃない、撮っちゃえば!」
ということで、その群れに混じって写真を構えた、その瞬間ッ!!
バンッ!!と私の手元に大きな衝撃が走りました。
と同時に足元にカメラが鈍い音を立てて石畳に叩きつけられたのが目に入り・・・。
キノコ売りのおばあさんが熊のように立ち上がり、熊のように手を大きく振りかざし
熊のような力でカメラを構えている私の手元を叩きつけたのでした。

緩やかな風とともに過ぎていった時間が急に現実に引き戻されて、いつものモスクワの
人、人、人の雑踏と車のクラクションと排気ガスの匂いをツーンと感じられるようになりました。
レンズも壊れ、シャッターも下りないカメラを手にして私はおばあさんに詰め寄りました。
「おばあさん、ちょっといいですか、あなたのしたことは少し加減がひどくはないでしょうか?
このカメラを見てください、一瞬にして壊れてしまいましたよ。しかもあんなにひどく叩かなくても
いいのではないでしょうか。。。ねえ、おばあさん、聞こえていらっしゃいますか?」というのを
世間でよく言う「バイオレンス風巻き舌」という技法を使って語りかけてみました。
ちなみに早口の日本語です。
私は広島育ちなのでそういう意味では説得力があるのではないかと思ったのですが
さすが、伊達にソビエト→ロシアの歴史を渡ってきたわけではないようで
涼しい顔をして遠くヴォルガ河の方向を無言で見つめているばかり。
そよ風がプラトークからこぼれた白い髪を揺らし、いい感じです。
カメラが壊れていなかったら記念に撮りたかったくらいの牧歌的ロシアな演出!

このおばあさんに弁償しろとは考えません、決してそんなお金は持っていないし。
このおばあさんに誤って反省して欲しいなんても思っていません、母親より上の
おばあさんに涙を流して「悪かったわ」と言われても逆に罪の意識を感じるだろうし。
ただ、人々が生きることを楽しむというよりは、生きるために戦っているという気がして
悲しくなりました。まだそういう国だと。まだというよりはむしろこれからも。
経済は急速に伸びているけど、その影で苦しむ人も多く、ストレスを抱える人も
増えているのは現実で、この国の行く末は私の中では不安が多いことを改めて感じた日となりました。

* ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * 
ああ、反省しよう、反省しよう、写真を撮るときは何でも断ろう。
壊れたカメラは見たくもないので修理せず処分!しました。
日本に帰ってからさっそく新しいカメラを買いに行きました。
若かりし頃(別に今も若いけど←誰も突っ込んでくれないのが悲しい)彼氏に振られると
次はもっといい彼氏ィ!と思っていた。
カメラも一緒だ。
壊されたカメラより上等なものを買ってやる!の勢いで購入。
けれど背伸びをすると機能が多くて使いこなせない。
ここら辺、やっぱりカメラも男も一緒ですね。




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